「私は……一回死んだの。死ぬはず、だったんです」
一瞬、耳を疑った。
今のは本当に可奈の口から出た言葉なのか、もしそうだとしたらいったいどういう意味なのか。
え、と声が洩れる。
目を見張るわたしを見つめ返した可奈は、静かに目を伏せた。
長い睫毛が影をつくる。
音を出すのを迷うように、その唇は震えていた。
次の瞬間、きらりと光る透明な粒が、可奈の目から零れ落ちた。
可奈は意を決したように息を吸って、言葉を紡ぎ出す。
「……昔、私は海で溺れて」
ひやりと背中を汗が伝う。
この先を聞きたいような、聞きたくないような、聞かなければならないような、そんな気持ちが混ざり合う。
だんだん呼吸が浅くなって、心音が速くなっていくのが分かった。
思わず胸に手を当てて、まっすぐに可奈を見つめる。
「そのとき……助けてもらったんです。一人の、女性に」
記憶を辿る可奈は、ゆっくりと話しだした。



