「何をしにきた。人をよんではだめだと言っていただろう。今すぐ帰れ」
「っ、お父さん!そんな言い方しないでよ!」
まるで動物を追い払うかのように手で帰るよう促すお父さん。
いくらなんでも、可奈にその態度は、ない。
ブチッ、と何かが切れるような音がした。
「お父さ────」
「今日は、ご挨拶に来たんです。謝罪をしに、参りました」
わたしの言葉に被せるように言う可奈に首を傾げる。
挨拶、謝罪。
いったい何のことを言っているのだろうと可奈を見ると、可奈はリビングを真っ直ぐに見ていた。
正確には────仏壇のある方を。
「栞ちゃん」
「えっ」
わたしに向き直った可奈は、鞄の中から小さな"何か"を取り出した。
暗目でも光を放つそれは。
かつて、わたしが。
「そんな……どうして」
目を見開くわたしの腕につけられたのは。
母の。
「ずっと私が持ってて、ごめんなさい」
────海色の、ブレスレットだった。
「これって、お母さんの……でも、可奈がどうして」
鼓動が速くなっていくのが分かる。
嫌な感覚がして、呼吸が浅くなっていく。
可奈はわたしとお父さんを交互に見て、それから口を開いた。



