海色の世界を、君のとなりで。

***


「ただいま」



返事がないことは分かっているけれど、ぽつりと呟いて家に入る。



「あ……どうぞ、入って」


「お邪魔します」



ゆっくりと靴を脱いだ可奈は、姿勢を正してわたしを見た。



「今日は家には……?」


「お父さんがいる。お母さんは……いない」



それしか言えなかった。


お母さんの諸々も、いつか可奈に話すことができたらいいなと思いながら、身を翻したとき。



「誰だ」



リビングからのそのそと現れたお父さんが、訝しげに可奈を見た。


明らかに不機嫌なようすを隠せておらず、ひやりとこめかみに汗が滲む。



「……わたしの友達だよ、お父さん」


「初めまして。小鞠可奈です」



どこか緊張した面持ちの可奈は、お父さんをまっすぐに見つめた。


その瞳には強い光を宿していて、何か大変なことが起こるような予感がする。