「だから……幸せになっちゃだめなやつなんて、この世に存在しねえよ」
「……どういう、こと」
「────今は分からなくていいよ。とにかく、俺はそいつのことを幸せにしてやれる。だから幸せになっちゃいけない人なんて、想いを拒絶する必要があるやつなんて、この世にひとりもいねえんだよ」
耳元で、強く。
それでいて、優しさを含んだ声で告げられた。
窓から入ってくるのはあたたかな春風。
わたしと彼が出会った季節だ。
忘れられない、春。
何度だって繰り返す、出会いの春。
そんなあたたかい春に包まれて、そっと目を閉じた。
このまま時が止まればいいのに。
彼と一緒に、このまま。
ずっとこの関係のままでいたい。
それがたとえ甘えだと笑われてしまったとしても。きっと思うだけなら、許される。
一瞬だけでいいんだ。
この一瞬が、永遠に続いてくれればいいんだ。
揺れたカーテンが、重なる影を隠すように舞う。
「……っ」
教室の戸のそば、聞こえた声すら。
わずかに震える存在すら、隠すように。



