「……っ」
鼻の奥がツンとして、涙がじわりと滲んだ。
どうして、この人は。
なによりも欲しい言葉を、いつもわたしにくれるのだろう。
「大好きな母さんだったんだろ。誰だって普通に悲しいだろうが」
「……っ」
「海、誘ってごめんな。……無神経だった」
違うよ、と言おうとした言葉は、より込められた腕の力によって止められる。
今まで、泣いてはいけないと思っていた。
お母さんは、わたしが殺してしまったようなものだから。
そんなやつがいくら嘆いて泣いたところで、お母さんはもう戻ってこないから。
それに泣いてしまったら、お母さんがもうこの世にいないということをはっきりと認めなくてはいけない気がして。
二度と会えないんだって、決まってしまいそうで。
だから怖くて涙が出なかった。
「……っ、う。うう……ああっ…」
お母さん。お母さん、おかあさん。
はやく、かえってきてよ。どこで何をしているの。
わたしはあなたがいないと、だめなのに。
あなたがいない世界で生きていくことが、こんなにも辛いなんて。
「ごめんなさい、お母さんっ……。わたしがあんなこと言ったから、死んじゃったの……? お願いだから戻ってきて、お願い、お願い……」



