海色の世界を、君のとなりで。


「ふふっ」


「笑うなっつっただろ」


「だって、星野も意外と単純だなって。一度しかあったことのない女の人なのに、巡り会うためにバスケを続けてるんでしょ?バスケットの選手なんてたくさんいるし、同じ県に住んでいるかも分からないのに」


「女っつか……女の子、だな」


「じゃあ星野の初恋の人、なんだ」



声を上げて笑うと、コツンとやや弱めに頭を小突かれる。



「馬鹿にすんなよ」


「ごめんごめん。でもちょっとだけ……可愛いなって。一途なんだね、星野って」


「言っとけ。……これでも成功してんだよ、一応」


「え?」


「なんでもねえよ」



ぼそっと呟かれたことは、上手く聞き取ることができなかった。


また今度訊いてみよう。


時間はたくさんあるのだから。



小さく息を吸って、居心地の悪そうな顔をする星野に向き直る。



「この際だから、星野に全部言う。わたしが思っていることを口にできないのは、言霊が……怖いからなの。またお母さんに言ったようなことを口走って、それが本当になってしまったら怖いから」