翌日。


一日中寝ていたためかすっかり体調が戻り、学校に行けるまで回復した。



教室に入った瞬間、パッと可奈と視線が合う。


けれどその次の瞬間、すっと逸らされてしまった。



……やっぱりまだだめか。



いつもそばにいてくれた彼女から避けられるというのは自分にとって相当心を抉られるらしく、落ち込んだ気分のまま、自分の席に座る。



「──あ」



引き出しの中に入っている何枚かのルーズリーフを見つけ、取り出す。


そこには見慣れた達筆で休んだ分の授業の板書がされていた。



この、字は。



そのとき、爽やかな柑橘系の香りとともに、黒髪の彼が目の前を通り過ぎた。


ちらとわたしを一瞥して、それから何事もなかったかのように視線を戻して着席する。


いつものことだけれど、それでも今日は少し気にかけられているような気がしたのは、わたしの勝手な勘違いだろうか。


そう思いながら、ルーズリーフをファイルにしまう。



風邪、引かなかったんだ。


まあ確かに身体、丈夫そうではあるけれど。



もう一度星野を見遣る。


いつも通り、特別変わったようすもない星野だけれど、それでも。



一昨日の出来事がリフレインし、ぶわっと頬が熱くなる。


あれは星野だったけど、紛れもなく星野だったけれど、でも星野じゃなかった。



あんな表情が、あんな瞳ができるなんて、知らなかった。


あんな星野、知らない。