わたしの無駄な運動神経は、この日のために用意されていたのかな……なんて。

 大きく高いと思っていた門は、案外簡単に越えることができた。

 雨で濡れていたとしても、滑ることなく無事に敷地に入ることができて、幾分安堵する。

 生徒はもういない。

 先生は……どうだろう。


 数人残っているかもしれないけれど、これだけ暗いからきっと外のようすなんて見えやしないはずだ。

 後輩男子とぶつかった場所まで、下を向きながら歩く。


 アスファルトは雨で黒く染まり、あたりいったい全て黒色の世界だ。

 空も黒、地面も黒、着ている部活の服も雨に濡れて黒、そんな中で降り注ぐ雨だけは透明なはずなのに、それでも空の色を通して黒く見えてしまうから。



「……まっくろ」



 そんな呟きすら雨に消されてしまう。