「あれ……あれ、ないっ」
異変に気付いたのは、日が沈んで少し経ったときのことだった。
通学路を歩いて下校し、家に帰って首の周りに手をやったとき。
あるものが"ない"ことに気付いたわたしは、必死に記憶を巡らせる。
……ないのだ。
海色のガラスドームのネックレスが。
いつも制服の下に隠して身につけていたネックレスがなくなってしまっている。
どこかで落とした?
今日の体育の授業のときも部活のときも、着替えるときにきちんと取り外したのを覚えている。
着け忘れた……なんてことはないはずだ。
ということは、失くしたのは通学路のどこかだ。
もしかして、後輩の子とぶつかったときに切れてしまったのだろうか。
けれど、ネックレスは何もしなくても切れるときは切れるって言うし……。
そんなことをうだうだと考えている間にも、辺りは暗さを増していく。
「……探しにいこう」
部活のジャージ姿のまま、家を飛び出す。
暗い世界はいつだって、孤独の闇でわたしを包み込もうとしてくる。
それでも。
「お願い、見つかって……」
祈るような気持ちで呟きながら、ただ一筋の光を必死に探す。
暗い道を、走って、走って。
がむしゃらに、無我夢中で走る。
それでも何も見つからないまま、学校のそばまで来てしまった。
学校の門は固く閉ざされていて、わたしのかすかな希望でさえも一刀両断するようにどっしりと構えている。
これでは、中に入れない。



