分かっていた。
好きになってはだめだと。
気付いていた。
あなたがその瞳に映すのは、私じゃないと。
それでも、止められなかった。
抑えられなかった。
恋という感情を知らなかった過去の私が聞いたら、いったいなんて言うのだろう。
『……栞ちゃんはさ。長い髪と短い髪、どっちが好き?』
まだ私の髪が長かったとき。
そう訊いたとき、あなたはちょっと止まって。
それから、柔らかく微笑んで。
『なにそれ。髪切るの?』
手を伸ばして、私のミルクティーベージュの髪をさらりと梳いた。
ねえ、知ってる?
私がこの髪色でいる理由。
『なんか手放せないのよね。ずっと愛飲してるの』
二人で向かい合ってとる昼食。
あなたの手には、いつも紙パックのミルクティーがあった。



