「わっ……」 「やっぱ、こっちの方が可愛いよ。眼鏡したって可愛さ隠せてないし。何かあったらまた守ってあげるから、眼鏡外して学校来なよ。そっちの方がいい」 微笑む彼女が、ふいにある人物と重なる。 ドクッ、と一度。 その高鳴りだけで十分だった。 経験なんて一度もなくて、ずっとずっとわからなかったはずなのに。 わかってしまったのだ、これがどういう気持ちなのか。 ひらひらと桜が舞う春。 出会いの、春。 これが、私が人生初めての恋をした成瀬栞との出会い。 そして私の、恋のはじまりだ。