「入学式からナンパですか。だっさいなあ、もう」
「は?てめえやる気かよ」
「いいですけどわたし、武道を嗜んでいるんです。容赦手加減、できませんよ?」
ぐっと言葉に詰まった男子たちは、わたしを掴む手を緩めて「覚えてろよ!」とお決まりの台詞を吐きながら去っていった。
「大丈夫だった?」
すぐに駆け寄ってきたその女の子は、私の顔を覗き込んだ。
琥珀色の瞳が光を受けて煌めいている。
「あの……武道、やっているんですか」
助けてもらったお礼よりも先に口をついたのはそんな疑問だった。
その子はパチパチと何度か瞬きをした後で、ペロッと舌をだす。
「あんなの嘘だよ。背が高いから強そうに見えるっていう謎理論。それを利用してみたの。あの男子たちは嘘だって見抜けなかったんだね。ラッキーだった」
へへ、とお茶目に笑う彼女を見た瞬間、ドクッ、と大きな音が頭に響く。
感じたことのないような、世界から音が消えたような感覚になる。



