「眼鏡、とってみてよ」
「絶対可愛いパターンじゃん」
「やっ……」
顔に手が伸びてくる。
何をするつもりなのか、そんなものは一瞬で分かった。
必死に眼鏡を守るけれど、相手は男子、それも二人だ。
力の差は歴然で、どう頑張っても敵うはずなかった。
眼鏡がずれて、視界にあった囲いがなくなりかけた、その時。
「何してるんですか」
飛んできた声に、男子たちの動きがピタリと止まる。
その声は強いのに、それでもどこか震えていて。
まっすぐに、こちらに飛んでくる。
「あ?何だよお前」
「その子、嫌がってるじゃないですか。離してください」
「なんでお前に指図されなきゃなんねえんだよ」
男たちの身体の隙間からちらりと見えたのは、長い髪を風に揺らし、まっすぐな瞳でこちらを見る女の子。
しばらく黙っていた女の子は、ゆるりと口の端を上げると、片眉をあげて挑発するような笑みを浮かべた。



