新天地、春。
誰もが新しい出会いに胸を躍らせ、入学する季節。
どうせ今までと同じなんだろう。
何も変わることなく、わたしは断り続けるだけ。
好きな人や恋人なんて、一生できないまま終わるのかもしれない。
「え、まって?めっちゃ可愛くね?」
「うわマジじゃん。ねえ、名前なんて言うの?何組?」
ふいに両サイドから挟むように声をかけられ、足が止まる。
こういうときは足を止めたらだめだったな、と止まってから思った。
遅すぎた、何もかも。
声は低くて。
先輩なのか同級生なのかは分からなかったけれど、とにかく大きくて屈強そうな男子ふたり。
「あっれ、無視?教えてよー」
「怖がられてんじゃん俺ら。優しーのになあ」
「……や、やめてください」
鞄を握りしめて俯く。
それでも、彼らは一向に離れようとしなくて、むしろこの状況を楽しんでいるようだった。
最悪だ。
やっぱりマスクをしてくるべきだったかもしれない。
眼鏡だけでは足りなかった。



