間近で見た可奈の顔は、驚くほどに綺麗だった。

 白い肌は、雪よりも白く透き通っていて、色素の薄い瞳や鼻筋が通った小さい鼻も、潤った薄い唇も。

 何もかも、溶けてなくなってしまいそうなくらいに儚くて、綺麗だった。


 少しでも触れてしまえばこの雪に紛れて消えてしまうんじゃないか、なんて。

 そんなことを思ってしまうほどに、ただひたすら美しい。


 ずっと可愛いと思っていたけれど、この子は"美少女"でもあるのだと、今この瞬間に実感させられた。


瞳を揺らした可奈は、目を伏せてきゅっと唇を結んでから、仰向けになって空を見上げた。


「栞ちゃん」


 赤い頬を緩めて、ふ、と可奈が白い息を吐く。二人きりの世界の中で、ふわり、ふわりと雪が舞い降りてくる。


「……私ね、好きな人がいるの」


その言葉は雪に溶けることなく、はっきりと耳に届いた。

 決定的な言葉を告げられると同時に、これで良かったじゃないか、と思った。

 これで、きっぱり諦められる。

 宣言をするということは、その人に対して本気を出す、ということを示唆している。

 好きとか好きじゃないとか、蛙化現象だとか。そんな自分の問題以前に、ライバルがこんなにも可愛くて優しくて人気者の可奈である時点で、最初から勝ち目なんてなかったのだ。

 芽生えることすら間違っていた恋。

(きっと……恋とも呼べないな)

 ふ、と息が洩れる。