わたしだけが抱く気持ちではなくて、割とみんなが通る気持ちのひとつにあげられているものなのだと。
「こんなの理不尽だって、される側の方が何倍もつらいって分かってるんです。でも、人を好きになる気持ちは他の人と変わらず持ってるから……どうしようも、できなくて」
「それで苦しいのね」
「……はい」
わたしの返答に頷きながら、先生は顔を上げた。
眼鏡の奥にある慈愛に満ちた瞳がわたしを見つめる。
「栞ちゃん。リスロマンティック、って知ってる?」
「りす……ろまん……?」
「リスロマンティック。相手に恋愛感情を持つけど、その相手から恋愛感情を持ってもらうことを望まないセクシュアリティの一つなの」
初めて聞く言葉だった。
先生を見つめ返して、その続きを聞く。



