海色の世界を、君のとなりで。


わたしは本を読むことが好きだった。

長期休暇には、家から近い図書館に通い、たくさんの本を借りて家に帰り読み漁る。


色々なジャンルを読んだけれど、やはり一番心惹かれたのは恋愛小説だった。

いつかこんな恋愛をしてみたいと夢見ていたし、なにより幼き少女たちに夢を与える作家のことを尊敬していた。



中学一年生になり、同じクラスの男子から告白された。

いつも優しく接してくれ、明るくクラスのムードメーカー的存在の彼に気がついたら惹かれていて、人生初めての"彼氏"という存在に浮かれて付き合うことを承諾した。

けれど返事をした、その瞬間。

ぶわっとなんとも言えない、言葉では表し難い嫌悪感に身体が包まれ、吐きそうになった。


……気持ち悪かった。


相手のことがではなくて、「付き合っている」という事実が。

その状況下に置かれているということが、ずっと胸の中に大きなしこりとなって、存在していて。

二ヶ月という、中学生にしてはほどほどとも言える期間で別れを告げた。

他に好きな人ができた、と嘘をついて。


それからしばらくして、だんだんその出来事の記憶も消えかかってきた中学三年生の夏。

夏休みが始まる少し前に、告白された。

相手は他クラスでイケメンと噂される人気者だった。