だから、今回も声を出さないつもりだった。
 何を言われても動じることなく、無視しようと心に決めていたのに。


「仲間に見せつけてんのか? "わたしはやる気がなくてもつかってもらえます"ってやってんのか」
「……は?」


 その言葉を聞いた瞬間、黙ってはいられなかった。

 低い声が口から洩れる。


「だってそういうことだろ。お前の代わりに出たい奴が山ほどいる中、つかってもらってるくせに本気でやらないってことはそういうことだろ」

「……違うし」

「どう違うんだよ」


 星野の言葉は、鋭い刃物のようにわたしの心臓を容赦なく抉った。
 厳しいほどの正論に、何も言い返すことができなかった。


 ああ、嫌だ。やっぱり苦手だ。
 わたしは彼が、苦手だ。


「星野には、関係ないでしょ」

「あ?」

「わたしがバスケを頑張っても頑張らなくても、星野には全然関係ないでしょ。ほっといて」


 苛々を隠せないまま言い放って、固く口を結ぶ。もうこれ以上言葉が出てしまわないように、自分を押しとどめた。

 顔が見えなくても、星野がふ、と息を洩らして(さげす)むように笑ったことで、嘲笑を浮かべているのが想像できた。

 押し黙るわたしをまるで嘲るように笑う星野は、「くだらねえ」と吐き捨ててそれきり何も言わなかった。

 沈黙が流れて、気まずい空気のままお互いに何も言わず、ただ時間の流れを待つ。