「保健室を利用するのは、怪我や病気のときだけじゃないのよ?」
「え」
目を見開くと、岡本先生はわたしの両手をあたたかい手でぎゅっと握った。
「心のケアをすることだって、保健室の立派な役目なの」
眼鏡の奥にある切長の目がふっと細くなった。
それから何度も大丈夫だよ、というように強く手を握られる。
「無理して話せとは言わないわ。けど、先生は栞ちゃんの味方だし、できることなら不安や悩みから解放してあげたいって思ってる」
大人の、それも女性のあたたかさを感じるのは久しぶりだった。
ポロポロと無意識のうちに涙が溢れ出す。
「今の時間は生徒もあまり来ないだろうし、少し話しましょうか」



