海色の世界を、君のとなりで。


「体調に少しでも異変があったら、迷わず私に知らせるか病院を受診しなさい。倒れるっていうことは少なくともどこかに異常があるはずだから。万が一、貧血じゃない可能性もあるからね」

「分かりました。ありがとうございます」


こくりと頷いてベッドから降りる。

そのまま保健室から出ようとすると、「ちょっと待って」と突然腕を掴まれた。


「……え」


振り返ると、真剣な面持ちで私を見つめる瞳があった。


「栞ちゃん」

「……はい」

「何か、悩み事があるんじゃない?」


ドクッと心臓が一度大きく鼓動する。


「どうして……ですか」

「うーん。そんな顔、してるから……?」


養護教諭の勘というやつらしい。

「なんとなくそんな感じがするの」とわたしを見つめる瞳。


何人もの生徒たちの相手をしてきているのだ。

その目で見守って寄り添ってきているのだ。


そんな瞳を誤魔化せるはずがなかった。

押し黙ると、先生は切長の瞳をすっと流す。