意外だった。
恋愛に無頓着そうな星野が、想いを寄せる女の子がいたなんて。
十人に聞けば十人が認めるような美形の持ち主である彼のことを好きだという女子は何人か耳にしたことがあっても、彼が誰かを好ましく思っているという話は聞いたことがなかった。
けれど、あの性格からして、自分の気持ちや相手との進捗状況をべらべらと喋るようなことはないだろうから、わたしや周りの人たちが知らないだけで、案外恋愛経験豊富なのかもしれない。
「……おい、成瀬?大丈夫か」
焦ったような声と驚きが混ざったような顔を、暗くなっていく視界の隅にぼんやりととらえる。
「おい、栞っ」
その声を最後に、わたしの意識は途切れた。



