海色の世界を、君のとなりで。


「その子のこと、どれくらい好きなの?」


彼女にも相当なプライドがあるようで、顔を真っ赤にしながらも星野に問いかけた。


「……すげえ好きだよ。誰よりも幸せにしてやるって決めてんだ」


星野は不機嫌を露わにしながら、「残念ながらそいつにしか興味ねえんだよ」と吐き捨てる。

やがてパタパタと音を立てて牧野さんは走り去っていった。


ずっと息を殺していたので、胸のあたりがひどく苦しい。

空気を大きく吸い込んで、ゆっくりと吐き出す。


「……あれ」


それなのに、なんだか胸のあたりがやっぱり苦しい。

もやもやというか、むかむかというか、形容するのが難しい感情に包まれているようだった。


「……っ」


喘ぐような呼吸を繰り返していると、急に視界が歪んで、ふらっと身体の力が抜けた。


「あぶねっ」


咄嗟に伸びてきた腕に受け止められる。


「……は、成瀬?お前、いつからここにいたんだよ」


目を丸くする星野の顔が急激にぼやけていく。


「成瀬?」


胸の奥深く、すべてをしまい込んでいるような場所から、ぐっと何かが迫り上がってくるような感覚がする。