海色の世界を、君のとなりで。


「……可奈」

「ん?」

「────特別、って何だと思う?」


ふいに口をついた言葉に、自分自身でもびっくりする。

答えなくていいよ、と慌てて首を横に振った。


「あれ、何言ってるんだろ。ごめん、なんでもな────」

「失っちゃだめなもの」

「……え?」


ゆっくりと視線を向けると、そこにはひどく切ない表情をした可奈がいた。

その顔がひどく大人びて見えて、ドクンッと鼓動の音がする。


「この人がいないと私はきっと生きていけない。忘れようと思っても忘れられない。その人のためなら何だってできる。特別な人って、そんな人……かも」


最後の方は恥ずかしさが込み上げてきたのか、徐々に声が小さくなっていく可奈。

いつのまにか"特別"が、"特別な人"に限定されている。