────よかった。
安堵の息を洩らすと、涼風さんは「やっぱり気になってるんじゃん」と笑った。
「ち、違うよ。誰だって不安になるでしょ。ほら、病気とか、普段の生活の中で聞かないし」
「……ふっ、動揺しすぎ」
「違うってばっ」
カアッと顔に熱が集まる。
「栞は星野のこと本当になんとも思わないの?好きとかじゃなくても、気になるとか、みんなとは違うとか、特別とか」
────特別。
その言葉だけが引っかかって言葉に詰まると、ほら見ろと言った様子で涼風さんが畳み掛けてきた。
涼風さんの言葉に白雪さんも続く。
「なんとも思ってないことないんじゃなーい?ねえねえ栞、どうなの?」
「好きなんでしょ、星野のこと。ウチが見る限り、たぶん星野も栞のこと────」
「やめてってば!!」
自分でも驚くほどの大きな声が出て、二人がハッと息を呑むのが分かった。
「……ごめん、言いすぎた」
「余計な口挟みすぎた。調子に乗っちゃった。ごめんね栞」
申し訳なさそうに眉を下げる二人。
違う、悪いのは二人じゃない。
恋バナは修学旅行の夜の醍醐味だ。
許容できないわたしが悪いのだ。
「────ちょっと外出てくるね」
力なく首を振って部屋を出る。
どこまでも続く薄暗い廊下は、怖いくらいに静かだった。



