海色の世界を、君のとなりで。


 その瞬間、となりにいた可奈がこちらに視線を向けた。綺麗な瞳がゆら、と揺れる。

 何かに怯えるように、何度も。

 それから小さく強い光をその目に宿して、可奈は口を開いた。


「星野くんは……?」


 その瞬間、悟った。
 やっぱり、思っていた通りだった。

 薄々、というより、だいぶはっきりと気付いていた。

 星野を見つめるあの熱を含んだ眼差し。
 わたしがやむなく星野と過ごした次の日は、いつも少ししつこく感じるくらい問い詰めて。

 星野がわたしに話しかけてきたときに、となりからにわかに感じていた悋気(りんき)だって。

 すべて、彼女の想いが星野に向いているのなら、納得できる。


 彼女とは、"恋バナ"というものをあまりしてこなかった。

 可奈が男子から人気であることは知っていたから、きっと少女漫画のような、綺麗で美しくて楽しい恋愛を沢山経験しているのだと思っていた。
 だから、わざわざ訊く必要もないだろうと思った。

 その方が、彼女にとっても楽だろうと。