海色の世界を、君のとなりで。


「……」


少し前を歩いている彼の表情は見えない。


ねえ、星野。

いったいどんな顔をしているの?

どういう気持ちでこれをくれたの?


訊きたいことは山ほどあるのに、わたしはそれすら訊くことができない。


「……お前は、分かりやすいんだよ」

「え?」

「なんでもねえよ」


聞き返したわたしにやや乱暴に言い放って、星野は前に進んでいく。


可奈たちとそろそろ合流しなくていいの、とか。

時間大丈夫かな、とか。


そんな心配事は、頭にふっと浮かんだけれど、言葉にならないまま消えていった。