「……あ」


一つのお店の前で、思わず足が止まる。

甘味処ではないそのお店には、キラキラとした小物が飾られている。

まるで見えない糸で引き寄せられるように、気付いたら近寄っていた。


「綺麗……」


思わず手に取ってじっと見つめる。

淡い海色をしたスノードームが煌めくネックレス。

こういうものはガラスドーム、とも言うと聞いたことがある。

そっと逆さにすると、星屑のようなたくさんの粒がキラキラと降った。


海の中の世界だ。

濁りのない、真っ青な海の色。


煌めく粒は、海底に沈むようにひらひらと降り立って。


涙が出そうになるくらい、美しかった。


「……欲しいのか」


横から覗き込むようにして、星野が訊ねてくる。

それに首を振って、わたしはそのネックレスをそっと机に戻した。


「ううん。ちょっと気になっただけ」


あまりにも、綺麗だったから。

心が動くのを、はっきりと感じてしまったから。


気付いたら、手に取っていた。


でもそれはきっと、海への憧れ。

この目で直接見れないからこそ、この小さな世界に閉じ込めておけたらどんなにいいだろうと、夢をみてしまっただけだ。



わたしには、綺麗すぎるから。


美しすぎる世界だから。



わたしが手にすることなんてできない────許されない、世界。