「美味そうだな」
清水寺参道は、たくさんの店舗と人で賑わっていた。
和風な街並みはまるで時代を遡っているようで。
思わずふ、と息が洩れる。
右にも左にもたくさんのお店があって、美味しそうな食べ物が売られている。
あんみつ、わらび餅、桜餅、みたらし団子。
この道はどこまで行っても甘味処で溢れている。
星野は視線を動かしながら、「美味そう」と再度呟いた。
「何か食べる……?」
「お前の奢り?」
「なんでよ」
ケラケラと笑う星野は、「嘘だよ」と言ってくしゃりとわたしの頭を撫でた。
いや、撫でた、というより髪をかき乱した、という方が正しいかもしれない。
「ちょっと!」
「悪い」
言葉にしただけで全然反省の色が見えない彼。
いつものことだ、と嘆息して、乱れた髪を整える。