「それにしても、こんなにごった返してるとはな……」

「香山くんすごいね。普通に尊敬する」


こんな人混みの中想いを伝えるなんて、なかなかできることではない。

それに、言ってはいけないかもしれないけれど、普段優柔不断でのほほんとしているあの性格。

公開告白的なものを出来る人間とは到底思えない。


「香山はああ見えて、やるときはやる男だからな。言えずじまいはないと思うぜ」


わたしの心を読んだかのように、星野がそう言った。

どこか誇らしげに言う星野を見ていると、なんだか無性に嬉しくなった。

自然と笑いが込み上げてくる。


「何笑ってんだ」

「いや、なんか。星野もちゃんと信じられる友達がいるんだなって」

「なんだそれ。馬鹿にしてんのか」


眉間に皺を寄せる星野。

しばらく顔を見合わせて、それからどちらからともなく噴き出した。


「……おもしれ」

「なにが?」

「お前の顔」

「ねえそれただの悪口!」


まったくこの男は。

どこに行っても変わらない。


せっかくの修学旅行だというのに、彼といるとなんだか日常生活のままの気分だ。

それでも悪くないと思えてしまうわたしは、既に手遅れなのかもしれない。


「たぶん、まだ終わってねーだろうし」


告白の結果はどうであれ、今戻るのは危険だろう。

後頭部で手を組んだ星野に軽く頷く。


「……俺たちも時間潰しすっか」

「え」

「どうせ暇だろ。一緒にぶらついてやるよ」


こうしてふいに、わたしの胸を高鳴らせるのも。


まったくこの男は。

どこに行っても変わらない。