海色の世界を、君のとなりで。



浴衣だから走りづらい。

それなのに、転ばずに走ることができる自分の無駄な運動神経のよさにまた笑いが込み上げてきた。

こんなに動きづらい格好で疾走する人が、いったいこの世に何人いるのだろう。


ひたすら走っていると、家の玄関まであっという間に着いてしまった。

家の前のあかりすら灯っていない。

目を瞑って、ゆっくりと深呼吸をする。


……きっと今日も、いつもと何も変わっていない。


それはいいことであり、悪いことでもある。

それでも、どうしようもないからわたしは同じような毎日を繰り返していくしかないんだ。