海色の世界を、君のとなりで。



……どうして。



目の前でさらりと揺れる黒髪を見つめながら、心の中で問いかける。


繋がれた手にすべての意識が引っ張られて、まともにこの状況を理解することができなかった。



灯りのない薄暗い道を、星野に手を引かれたまま歩く。


ドク、ドクと鼓動の音が鳴り響いて、星野に聞こえていないだろうか、と心配になった。



会話を交わすこともなく、独り言を言うでもなく、ひたすら無言のまま歩く。


気を張り詰めていないと、お互いの息遣いすら聞こえてしまいそうで、空気を吸えない呼吸を何度も繰り返す。



「お前も」



ふいに、くるりと振り返った星野の顔を、僅かな月明かりが照らす。


ドクンッと身体全体から鼓動が鳴った。


今までにないような感覚だった。



まっすぐに見つめてくる綺麗な瞳は、海に夜を溶かしたような藍色。


それなのに、空に輝く星を凝縮させて詰め込んだような、夜の闇に負けないほどの煌めきを宿していて、その瞳から目が離せなくなる。



「女なんだから、一人だと危ねえだろ」



ふっとその瞳が細められる。


その瞬間、ぶわっと心の奥底から身体中を駆け巡るものがあった。



────だめだ。よくない。



パッと繋がれていた手を振り払う。


彼が一瞬目を見開いた。


慌てて目を逸らして、胸の前で拳を握りしめる。