海色の世界を、君のとなりで。


右には可奈、左には星野がいる。

何にも代え難い二人が、ここにいる。

そのことが、わたしの心をこんなにもあたたかくさせるのだ。

二人がどんな顔をしているのかは分からないけれど、思っていることはきっと同じ。


───…綺麗。


それはわたしたちだけではなく、ここにいる人たちみんなが、同じように思っているはずだ。


年齢や性別、歩んできた人生と、これから歩む人生。

そんなものは別々で、まったく知らない人たちなのに。


この瞬間だけは、同じものをみんなで見上げて、綺麗なものを共有している。

同じ心の動きを体験して、誰もがこの景色を目に焼き付けている。

それって、すごいことだ。

決して交わらない運命で、関わることのない人たちであったとしても、同じ時間を共有している。

そんな連鎖の中で、わたしたちは生きている。


────このまま時が止まればいいのに。

この幸せな一瞬が、永遠に続けばいい。


そんな叶いもしないことを願いながら、わたしはただひたすら、夜空に溶ける大輪の雫を見つめ続けていた。