「可奈、ほんとにわたしが決めてよかったの?」
「うん。ありがとうね、栞ちゃん」
どこか寂しげに目を伏せる可奈を「あっちに座ろうよ」と香山くんが促す。
そのまま図々しくも、ノーリアクションの可奈の肩を抱いて、ずんずんと歩き出してしまった。
「可奈……」
呟きが、果たして届いたのか否か。
あっという間に香山くんに連れていかれてしまった可奈は、人混みに紛れて消えてしまった。
一瞬見えた翳りは、きっとわたしが生み出してしまったものだ。
途端に罪悪感に苛まれる。
香山くんにとってはいいことをしたかもしれないけれど、可奈にとってあれが果たして良い選択だったのか、きっぱりと頷けるわけではない。