「え、と……栞ちゃん、どうする?」



困ったように眉を寄せて訊ねてくる可奈。


誘われたのはあなたなんだよ、と思うと同時に、わたしにきちんと訊いてくれるところがまた彼女らしいなと思った。



ちらと香山くんに視線を遣ると、祈るような目でこちらを見ている。


わたしに承諾してほしいという気持ちが前面にあらわれていた。



「可奈は、どうしたいの?」



ここはやはり、本人の気持ちがいちばんだ。


もし可奈が嫌なら、それは十分断る理由になる。



「私は……栞ちゃんに選んでほしい」



上目遣いで言われてしまえば、誰だって簡単に断ることなどできない。


男性からの誘いをまったく関係ないわたしが決めるなんて、まったくもって理解不能すぎる話だけれど、可奈がそれを望むのなら仕方がない。



もう一度香山くんに目を向ける。


香山くんは顔の前で手を合わせて、ガバッと頭を下げた。



「……あー、じゃあ一緒でいいんじゃない?大人数で見た方が楽しいだろうし」



結局、圧に負けてしまった。


小さく息を吐きながら言うと、香山くんは「ありがとう」と途端に目を輝かせた。