「小鞠さん、今日はどれくらいまでいるの?」

「あ……えっと、花火が上がるまでは、いるつもりだけど……」

「そっか」


香山くんの視界には、わたしのことなどまるで入っていないのだろう。

言葉が向かうのも、瞳が向けられるのも、すべて可奈だけだ。

そりゃそうだ。

何の需要もないわたしなんかを見るより、思わず抱きしめたくなるくらい可愛らしい可奈を見た方がいい。


お祭りというイベントだからこそ、普段話しかけることができない分、勇気を出す場でもある。

それは分かっているけれど、それでも少しだけ……さみしい。

劣等感はそれなりに抱くから、可愛い子のそばにいると余計に自分が惨めに思えてきてしまう。


可奈のことは大好きだけど、羨望の眼差しを向けてしまうのも事実。


となりを歩きたくない、なんて。

そんな身勝手で理不尽なことすら浮かんできてしまうときがある。