「なん……で」


可奈の苗字を呼んだ彼よりも先に、彼のとなりにいる男子に視線が吸い寄せられて、思わずそんな呟きが洩れる。

目に入る信じ難い光景に目を見開くわたしに、"彼"は軽く手を上げていつものようにへらりと笑った。


「よう」

「どうして……」

「どうしてってなんだ。俺だって祭りぐらい来る」


何度かの言葉のラリーをしているわたしたちの横で、さっき可奈に声をかけた彼────香山(かやま)くんが照れたように頭を掻いた。


「こんなところで会うなんて……奇遇だね。小鞠さん」

「えっ、あ、うん。そうだね」


にわかに困惑気味の可奈にふわりと笑いかける香山くんは、自らのとなりにいる男子に「な、星野?」と同意を求めた。

星野は小さく頷いた後、肩をすくめて天を仰ぐ。

そんな適当な返しで満足したのか、香山くんは可奈の方を向いてにっこりと笑い「会えて嬉しいな」と告げた。