えへへ、と笑った可奈は「栞ちゃん、ラムネ一口ちょうだい」とわたしに向き直った。


「うん。いいよ」

「やった!じゃあ……」

「はい、あーん」


氷をすくって差し出すと、可奈はピタリと動きを止めた。

パチパチと何度も目を瞬かせて、まっすぐにわたしを見つめてくる。


絡まる視線のなか、時が止まったような気がした。


「なに、どしたの」


ゆら、と可奈の瞳が揺れる。

驚いたように硬直する可奈に、こっちまで何かあったのかと不安になってくる。

もしかして、間接キスとかを気にするタイプなのだろうか。


「可奈?」

「……あ、ごめんっ。いただきます」


そんなわたしの不安をよそにパクッとかき氷を食べた可奈は「……美味しい」と呟いて視線を逸らした。

以前お弁当の卵焼きをもらったとき、箸のことをあまり気にしているふうではなかったから、今回はたぶん、わたしの思い過ごしだ。


差し出したかき氷のストローを、不恰好になってしまった氷にさしたその時。


小鞠(こまり)、さん……?」


小さくて控えめな声が横から聞こえて、声がした方をパッと振り向く。

カップから小さな氷の塊が落ち、すうっと地面で溶けて消えていった。