「イチゴひとつお願いします!」

「じゃあわたし……ラムネで」


 王道なイチゴを頼んだ可奈は、満面の笑みでかき氷を受け取った。
 わたしもラムネを受け取り、人が少ないところに腰掛けて、かき氷を口に運ぶ。


「んっ!美味しい!」

「ほんと。美味しいね」


 しゅわっとした感覚が口の中に広がり、夏らしい爽やかな味がした。

 かき氷を食べるのは何年ぶりだろうか、と頭の片隅で考えながら、イチゴのかき氷を食べる可奈を見つめる。


「……そんなに見られると、恥ずかしい、っていうか」


 わたしの視線に気付いた可奈が、ほんのりと頬を赤くさせて瞳を揺らした。


「ごめん。見惚れてた」


 かき氷を食べる可奈が、女のわたしから見てもあんまりにも可愛かったから、ついじっと見つめてしまった。

 きっと彼氏の前でもこんな感じなんだろうな、と密かに思う。

 可奈の彼氏は毎日この可愛さと真正面から向き合わないといけないってことだ。天使級の可愛さを感じる分、自らの命の危機も感じて生きていかなければならないだろう。

 そこまで考えて、ふと思いついてしまった。


「可奈……今さらだけど、お祭りに一緒に来るの、わたしでよかったの?」


 可奈に彼氏がいるとかいないとか。
 そういう恋愛系の話はわたしたちの間では皆無だ。

 それは、やめようね、などと話したわけではなく、不思議と感覚的に話してはいけないような、独特なオーラというか雰囲気のようなものがあるから。