「ごめ……ごめんな、さいっ……」 コートを出るところまでは我慢していた。 ちぎれてしまうのではないかと思うくらいに唇を噛みしめて、なんとか堪えていた。 けれど、礼をしてコートから出た瞬間。 ダムが決壊したように、涙が溢れて止まらなくなる。 「栞ちゃん……」 となりにいる可奈は、どう声をかけてよいか分からず困っているようだった。 変な励ましをしない方が良いと思ったのか、何も言わずにただわたしの背中を撫でてくれている。