海色の世界を、君のとなりで。


緊張感に包まれる中、放たれるフリースロー。

ガコン、という音が響き、生まれた安堵と落胆、わずかな焦り。

二本目がガコン、と音を立てたとき、身体は動き出していて。


必ず、とってくれる。

先輩は、とってくれるはずだ。


必死に自分のチームのコートに走る。

残り、五秒。


「栞────!」


ロングパスを受け取って、スリーポイントラインギリギリに足を揃える。


完全フリー。

こんな機会、そうそうない。


決めなければ、絶対に。



これを外せば────。



ぶわっと脳内に先輩方の顔、中山さんたちの顔、そして可奈の顔が浮かんだ。

手から力が抜けるような嫌な感覚がして、足が震える。


それでも必死に己を奮い立たせて、オレンジ色目掛けてボールを放った。

ボールは弧を描いてまっすぐにゴールに飛んでゆく。



うだるような暑さのなか、誰もが息を呑んでボールの行く末を見守るなか。


一瞬の静寂に響くリングの音とともに。



────夏が、終わった。