わたしが抜けている間に点差は離され、まもなく十点差になろうとしていた。
ピーッという審判の笛を合図に、他の選手と入れ替わる。
わたしの背中を押してくれる人がいる。
可奈に、麗華先輩に、真波先輩。
……中山さんに、星野。
そして、大好きな人。
真波先輩からボールを受け取って、中に切り込んで確実に二点を取る。
こうやってディフェンスを崩していけば、勝機は十分にあるはずだ。
ゴールにボールを入れるたび、ナイシューとベンチから声があがる。
残り三十秒、三点差。
相手がスローインを入れようとしている。
「か、かて……」
勝てる。
小さくても、そんなことを口に出すだけでいい。
それだけで、いいのに。



