海色の世界を、君のとなりで。


けれどそれは以前のようなものではなくて、少しだけ優しさが含まれているような。


「すっごい変な顔してるよあんた。スタメンは堂々としていないと」

「……ありがとう。それと、本当にご────」

「ああ、もういいってば!ほんと学習しないねまったく……それなりに頭いいんじゃないっけ」


ふいに視線が絡まる。

数秒間見つめ合って、中山さんは茶色い瞳をふっと柔らかく細めた。


「次、交代でしょ」


突き出された拳に、おずおずと拳を合わせる。


崩れた人間関係の再構築は不可能だとずっと思っていた。

けれど、それはわたしの勝手な思い込みで。


「栞……がんばれ」


気付けていないだけで。

わたしの周りには、優しさが溢れているのかもしれない。