海色の世界を、君のとなりで。


「……ベンチメンバーは、これしかしてあげられないから」

「えっ」

「……コート上で活躍するのは、あたしたちにはできないことだから」


ぽつりと。

それだけ言って、口を結んで処置を施してくれる中山さん。


見ていたら、分かる。

こんなに綺麗にテーピングできるのは、たくさん練習したからだ。

巻き方を調べて、覚えて、練習したからだ。


わたしたち選手が試合に少しでもコンディションよく出れるように、サポートするために。


……ああ。


わたしはどうしてあんなに酷い言葉をぶつけてしまったのだろう。

つくづく自分が嫌になる。

裏方にまわることは、誰もが葛藤なくできることではない。

上の人を支える、なんて簡単な言葉だけれど、実際に快くできる人はほとんどいないだろう。


「マネージャーがいない分、テーピングはうちらの仕事だし。あんたは気にせず試合してきなさいよ。……はい、終わり」

「……うん」


こくりと頷くと、苦い顔をした中山さんはわたしを横目で睨んだ。