海色の世界を、君のとなりで。


「あ、男子はまだやってるよ!」


 可奈の声を聞いて、ふと床に落としていた視線を上げる。

 可奈の視線を追うと、男子側のコートは、まだ試合の途中だった。

 目を凝らすと、点差は二点差でうちの学校が負けている。


「残り時間二十秒ってことは、ラストプレーじゃんっ!」


 きゃあっと可奈が声をあげた。

 接戦ということもあってか、ギャラリーからも他コートからも、多くの注目を浴びている。

 ボールを持っているのはうちの学校だった。

 キャプテンがなにやら手で指示を出している。

 二十秒あれば、じゅうぶん攻める時間はある。

 確実に二点をとるか、あるいは。


 浮かびそうになった可能性を慌てて否定する。

 さすがに無理だ。
 そんなことをできる選手なんていない。


 ……ただ一人を除けば、だけど。