『今朝はご心配おかけして済ませんでした。佐藤 奈々(さとう なな)と申します。桜ヶ丘高校の2年です。』

「これでよしっ!送信!」

昼休みの時間、仲良しの真美ちゃん(清水 真美(しみず まみ))とタケっち(武田 晴湖(たけだ はるこ))とお弁当を食べ終えた後、今朝、私を心配してくれた男の子から貰ったメッセージアプリのID宛にメッセージを送った。

知らない人と連絡を取り合うのは少し抵抗があったが、迷惑をかけ、お世話になったのだからお礼のメッセージは送らなければ失礼なんじゃないかと3人で話し合い結論を出した。

明るい性格で男子ウケの良い顔をしている真美ちゃんと、女子の割には背が高くてモデルのような体型をしているボーイッシュ女子のタケッちとは高校に入学してから仲良くなった。私を含め3人とも共通の趣味も無く価値観もバラバラなのに何故か気が合って、お互いに居心地が良くいつも一緒に過ごしていた。
2人にはお弁当を食べながら今朝の出来事を話したのだが、奈々らしいと、笑われてしまった。

 彼も今はお昼休みなのかなぁ…。

「ちゃんと送信できた?」

心配そうに覗き込む真美ちゃん。

「IDちゃんと確認したー?奈々の事だから全く関係ない人に送ってない??」

タケっちが売店で買ったデザートのプリンを食べながらスプーンで私のスマホを指す。

「送信エラーにもなってないし大丈夫だよ…。たぶん。」

そう思っていると『既読』とメッセージ横に表示されたかと思うと、直ぐにブブッとスマホが震えた。

『今朝は勘違いして引き止めてしまってごめんなさい。遅刻しませんでしたか?僕は磐田 耕史(いわた こうじ)と言います。第一高校の佐藤さんと同じ2年生です。』

今朝の彼からの返信だった。
私のスマホを覗き込んだ真美ちゃんが、

「あ!知ってる!第一の磐田耕史!頭良くてメッチャかっこいい上に弓道部のエース!」

「へー、そうなんだー」

テンション上がった真美ちゃんとは逆に興味なさげにタケッちが棒読みなイントネーションで言った。食べていたプリンのカップが空になると昼食の片付けをしながら

「私は3次元の男子に興味なし!頭も顔も良くて部活のエースって、そんな出来過ぎた人間なんてこの現実世界には存在しないのだよ。絶対にその男訳アリだな。」

とタケッちが言ってきたので、

「訳ありって…。私のこと全く知らないのに泣きそうになってるのに気づいてハンカチ貸してくれたんだよー!きっと良い人だヨォ!」

と言い返してやった。

「それだけで良い人認定するの早いんじゃない?そいつの作戦かもよ?良い人に見られたい的な。」

何故かいつもタケッちは三次元の男の子に対して厳しい。

「タケッちの意見もわかるけどさー、それがね、性格も良くて有名で、うちの学校でもファンの子いるんだって!!ファンクラブみたいなのがあるって話もあるよー。」

真美ちゃんはどこからそう言う情報を得るのか他校のイケメンについてとても詳しかった。