初めて彼女を見つけてからだいぶ経った日。

今日も彼女を見つけた。

しかし、今日は本を読んでいない。

…本を読んでいないなら、百面相は見られないな。残念だ。

それでもいつもの癖で視線は彼女へと行ってしまう。

あれ？

何かを我慢しているかのように口を硬く結んでいる。

どうしたんだ？？

乗り換えの駅も乗り換える電車も自分と同じなのは既に知っている。

乗り換えの駅で電車を降りると少し早歩きをして彼女に近づいてみる。

っっっ！！！

彼女の目には今にも溢れ出しそうに涙が溜まっていた。

何があったんだ！？

痴漢か！？

「っだ、大丈夫？？？」

思わず声をかけてしまった。
自分にこんな行動力があったなんて知らなかった。

「えっ？…あぁ、はい。大丈夫ですが…。」

振り返った彼女の瞳からは涙がポロポロとこぼれている。

「絶対に大丈夫じゃないよね？それ…。とりあえず、こっちきて。」

と言ってそのまま腕を引き、人が少ないベンチへと連れて行った。

男だけの発想かも知れないが、色んな人に泣き顔を見られたくはないだろうと思っての行動だった。