先月のテスト期間前、俺の頭は完全にスランプに陥っていた。まず、思う様に小テストの点数が取れない。
勉強しても頭に入らないし、頭に入らないと余計にイライラしてしまい集中できなかった。

ずっと学年の成績上位をキープしてきたのだが、今回はダメかもしれない…。

…あぁ、胃が痛い。

何をやっても一番をとる兄といつも比べられ、わずかに劣る俺の成績をみていつも父親にはため息を付かれていた。
コンサルティングを行う会社を一代で築き上げ、数百人の社員を束ねている父親はそれはとても優秀なんだと思うが、俺は兄貴の後を辿るだけでも必死だった。
優秀な親の子が全て優秀とは限らない。兄貴のように優秀ではない自分は、自分の人生を好きに生きたいと思っているもの、親父に拒否されきっと願いは叶わない。だから、しかたなく兄貴の人生を辿るように同じ高校に入学し成績上位を保てるように日々努力をしていた。

電車の扉に持たれながら、なかなか頭に入らない単語帳アプリを眺めていた。ふと、視線を他にやると女子高生が1人反対側の扉のそばに立っている。

初めはただ雰囲気が柔らかく優しそうなコだなぁ…って思ったんだ。

すると、本を読んでいる彼女の表情がみるみる変わって面白い。
眉間にしわが寄ったかと思うとすぐに顔をニヤけだしたのだ。

っぷ…。

彼女見てるだけでなんだか癒された。
例えるなら小動物を見てる感覚。

見てるだけで癒される。

彼女を見てリラックスできたのか、この後の勉強が捗り、学年上位をキープすることができ、父親の小言を聞くことは無かった。

その後も通学中に何度も彼女を見つけ、いつの間にか彼女を目で追うようになっていた。

いつ見ても相変わらず本読みながら百面相になっている。

一体、何の本を読んでるんだろう?

どんな子なんだろう?

だんだん興味が湧いてきた。

完全に俺の毎日の癒しになっていた。