本来なら授業中であるこの時間に専業主婦の母のいる自宅には戻れず、仕方なく姉と二人でカフェで時間をつぶすことにした。平日の昼間にカフェにいる事に罪悪感と特別感が混ざり合って不思議な感覚だった。

オーダーしたビバレッジを持ってテーブル席に着き、ひと段落して注文したカフェモカを飲もうとした時だった。

『ブブッ』

スマホが震えたのでディスプレイをみると電話番号あてに知らない番号からメッセージが届いていた。
フィッシングや広告かと思ったが、今朝の画像の件もあったのでなんとなく開いてみたが、そのメッセージを読むとギョッとして全身に鳥肌が立つのがわかった。

『こんな時間にカフェにいるなんて不良ね。』

「お姉ちゃん…。これ…。」

姉はそのメッセージを読むと慌ててカバンを持ち、私を連れて携帯のキャリア会社に向かった。そこで調べてもらった結果、いつの間にかマルウェアのスパイアプリがインストールされており、どこからでも私のスマホに不正アクセスができるようになっていた。お店のスタッフさんは『警察に相談した方が良いですよ。』とアドバイスをくれた。

…いつの間にスパイアプリなんてインストールされたんだろう?

「もし、例の松田さんって子がこの画像の送り主で、これを仕込んだ子ならとんでもないわね…。楓真(ふうま)に連絡しておくね。」

と、前回、警察と弁護士に相談しておくと言っていた姉の彼氏に画像の件を含めて先に連絡をしてくれた。そのままこのスマホを使うのも不安だし、かといってスパイアプリに気づいたことにバレると証拠を消されてしまうと思ったので、今までのスマホはそのままにし、姉は新規にスマホを契約してくれ、しばらくはそれを使うことにした。

携帯のキャリア会社にて手続きが思いのほか時間を取り、ファミレスでランチをしていたら、あっという間にいつもの帰宅時間になったので、姉と二人で帰路に就いた。

新しいスマホを持ったことが松田さんにバレたくないのでメッセージアプリの新しいアカウントを作成し、姉が前回とは別のグループトークを立ち上げてくれ、そちらにメンバーを招集し、今日の事を報告をする。

『俺のせいでごめんな。』

グループトークとは別に新しいアカウントあてに磐田くんから直接メッセージが届いた。

『犯人が松田さんと確定したわけじゃないから気にしないで。』

タイミング的に犯人は松田さんしか思い浮かばなかったが、彼が自分を責めてしまう気がしたのでこのように返信をした。

 そもそも、私が彼を好きになってしまった事が彼女にばれてしまったから…。

『ごめんなさい』と言わなければならないのはこっちの方だ。なのにアプリでトークしていると彼にますます声が聞きたくなり、会いたくなり、好きって気持ちが止められなくなり涙が溢れてくる。好きて気づいた時のふわふわとして暖かい気持ちとは正反対に同じ好きって気持ちなのに今は苦しくて仕方がなかった。