朝練を終えて教室に行くと机に突っ伏した状態の葵がいた。

 朝だから眠くて寝てるのか?

 一応挨拶しておくか…。

「おはよ。」

「…おう。」

葵は顔を上げずに返事をした。

「昨日のメッセージは何なんだよ。返事に困るじゃんか。」

「悪い…おれ、今ぐちゃぐちゃなんだ。」

「はっ?」

「耕史に奈々を取られるどころかフラれそう…。めっちゃ避けられてる。」

葵と会話してるとイライラすることが多かったが、振られそうと聞いて少し気分が良くなった。

 なんで気分が良くなった?

その瞬間にやっと自分の気持ちに気付いた。

今朝のキスしたい衝動といい、今までの葵に対するモヤモヤとした気持ちといい、俺は奈々ちゃんを癒しキャラなんかじゃなくて女の子として見ていたんだ…。

でも、この気付いた気持ちは葵には言えない。ずっと、奈々ちゃんの事はそういう目で見てないと言い続けていた。

 今更だよな…。

かと言って、葵が奈々ちゃんに振られた後、彼女がOKしてくれたら俺は喜んで彼女と付き合えるのか?

それも違う気がする。

「……ごめん、俺も今ぐちゃぐちゃになった。」

「あはは……。何だよそれ。」

それを聞いて葵はやっと顔を上げて俺をみるとクスっと笑った。