「お前、かぼちゃとか好きだったよな?ほら、美味そうに焼けたぞ。食えよ。子どもの頃、家の庭でよくバーベキューやったよなぁー。」

葵くんは焼きたてのかぼちゃをわり箸で掴むと無理矢理わたしの口元へ持ってきた。

「ちょっと、自分で食べられるって!」

ここに乗せてと紙皿を差し出す。葵くんの言葉で天気の良い休日にはふた家族揃って庭先にアウトドア用のテーブルや椅子を並べて外で食事していた事を思い出した。

 懐かしいなぁー…。
 葵くんってばいつも紙皿に山盛りのかぼちゃを運んできてくれたっけ…。

「葵、そんな直ぐじゃ奈々ちゃんが火傷しちゃうよ。はい、オレンジジュース。」

磐田くんはクーラーボックスを開けると、オレンジの缶ジュースを一つ取り出し、『プシュっ』と言う音と共にプルタブを開けると飲み口をこちらに向けて渡してくれた。

「耕史、奈々はオレンジより昔っからりんごジュースの方が好きなんだよ。俺のリンゴジュースやるよ。ほら。」

そう言って、テーブルに置かれていた飲み掛けのリンゴジュースを渡してきた。

「……ありがとう。」

食べ物が焼きあがると、磐田くんと葵くんが競い合うかの様に突然私の世話をし始めた。

 何かを賭けてゲームでもしてるのかなぁ…。

私はその程度にしか思っていなかった。

「あ〜ら。なんか面白いことになってるね。葵くん連れてきて良かったわ(笑)」

姉が真美ちゃんとタケッちの間から顔を出してボソッと呟いた。

「そうなんですよー。でも、本人が何であんなに世話焼かれてるのか気付いてないのが面白くて。今度、溺愛系少女漫画のコミック貸しておきます。」

「わぁー是非よろしく、うちの妹、活字の難しそうな本しか読まないから(笑)」

「私は葵くんとはおしゃべりしたかったのにぃーっ!ここまでされるとなーんか冷めちゃう。」

「だから、真美ちゃんは彼氏いるでしょ(笑)」

そこから約30分、フォアグラ用のガチョウに餌をあげるかの様に両サイドから焼き上がった食べ物を強制的に渡された。